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『割り算でも増える』 「おもひでぽろぽろ」というアニメ映画のなかで、小学生の姉妹が算数の宿題をやっ ているシーンがある。妹が分数の割り算に悪戦苦闘しているようで、姉が教えている。 姉の説明に納得のいかない妹がこんなことを言った。 「どうして割り算なのに増えるの?」 映画を見てから少々経つので、本当はちょっと違う台詞だったかもしれないが、了承 願おう。 彼女の言い分からすると、割り算とは減るものらしい。例をあげて確認してみよう。 8÷2=4 8を2で割ると、4になる。8から4に減っている、という言い分らしい。 では、姉妹が苦戦していたように、分数での割り算だとどうだろう。例えば分数で割 る例として、3÷(3/5)を考えてみる。 3÷(3/5)=3×(5/3) =5 さっきは8から4に減ったのに、今度は3から5に増えている。どうしてだろうか。 いま、数が増えたり減ったりする例をあげたが、そもそも増えたり減ったりするのは 足し算と引き算のはずだ。では加減乗除の残りの2つ、掛け算と割り算はなんなのか。 掛け算は、同じ数を何回か足し合わせたときに果たしてどんな数になるか、というも のだ。例えば、6個入りのリンゴの箱が5個あったときに、リンゴの総数は6+6+6 +6+6で求まる。6を5回足し合わせることを、6×5と書き、九九の表にのっとっ て一気に答えを求める。 結局、掛け算とは足し算の応用といえる。したがって、掛け算は増えるものだという ことが分かる。 では割り算はどうだろうか。掛け算が足算の応用なら、割り算は引き算の応用かもし れない。例えば、30個のリンゴを8個ずつに分けてみよう。 30−8−8−8=6 これはどういう意味だろう。割り切れないような意地悪な計算なのがいけないのか。 ならば、30個のリンゴを6個ずつに分けてみればよい。 30−6−6−6−6−6=0 すっきりしたが、やはり違う。引き算を繰り返しても 余り が出るだけだ。 いわずもがなだが、求めたいのはイコールの右側ではなく、左側にある。「6を引く」 を何回繰り返せるか、というのが商なのだ。繰り返すが、商は、「6」が何個になるか、 である。 多くの場合、割り算は増やす(分配する)ために使われる。例えば、一箱に30個のリ ンゴがあるとき、それを6人分に分配するために、30÷6=5とする。つまり5個ず つにわければ、1箱のリンゴを6人分に分配できるわけだ。こういう場合の割り算の目 的は「1」箱を「6」人分に増やすことであって、決して5に減らすことではない。 整数の割り算は分かりやすいが、分数の割り算とはどんなものだろうか。水で考えて みよう。 2つの大きな樽に水が入っている。これを、樽の1/5の容量の桶に移し変えるなら、 桶何杯分になるか。 桶の容量は樽の1/5だから、一つの樽から5杯とるとその樽は空になる。 1−(1/5)−(1/5)−(1/5)−(1/5)−(1/5)=0 樽はもう一つあり、その樽からも明らかに5杯とれるから、 5杯+5杯=10杯 答えは10杯。当然ながら、2÷(1/5)の答えに等しい。 では今度は、10個の桶があるとき、その桶の5/2の容量の樽に移し変えるなら、 樽何杯分になるか。 樽の容量は桶の5/2だから、1つの桶の水を樽に移しても、ぜんぜん足りない。 1−(5/2)=−(3/2) 2つの桶の水でも足りない。3つだと余るので、余った分(桶1/2杯)は次の 樽に移す。 3−(5/2)=(1/2)→次の樽へ 2つめの樽は、桶1/2杯分から始まる。その樽に4杯目の水を移すと、 1+(1/2)−(5/2)=−(2/2) こうやって順次水を移していくと、結局、10杯の桶の水は樽4杯分になる。 10−(5/2)−(5/2)−(5/2)−(5/2)=0 答えは樽4杯。当然ながら、10÷(5/2)の答えに等しい。 割り算は、分配するための計算である。割り算すると減るんだ、という思考に縛られ るのは、健全なこととは思えない。 例え小学生であっても、だ。 話が戻るが、30個のリンゴを8個ずつに分けて30−8−8−8=6にすることに ついて、もう一度考えてみる。この式を余算とみなす分には、特に違和感を感じない。 だが、実際に30個のリンゴを分配するとき、こんな分配をするだろうか。普通はリン ゴは4つのグループ(8,8,8,6)、つまり30−8−8−8−6=0にするので はないだろうか。もし、3つのグループ(8,8,8)で満足して、リンゴ6個を余し てしまうようなら、それは不自然なことに思える。余り6で終えてしまうような思考に 縛られることもまた、健全ではないのかもしれない。 |
| 散歩 15/Dec/1999 |