〜理科の時間の寝言〜
『問題は浮上しない』
以前、学習塾「日能研」の広告に載っていた問題である。(実際の問題と若干違うかも
しれない)
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生卵が浮きも沈みもしない状態で静止しているとき、どのような向きになるか。図の中から選びなさい。
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| A |
B |
C |
D |
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答えはこのトピックの最後で。
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電車の壁に、学習塾「日能研」の広告が貼ってある。その広告には必ずクイズ形式の
問題が載っている。上記の問題もその一つだ。「この小学生むけの問題、大人のあなた
に解けますか?」って挑発するような問題なので、私もついついこの問題に挑んでしま
う。社会なんかはまったく歯が立たないが、理科や算数ならどうにかなる。と、思う。
ところで、小学生になら答えが分かるが、大人には答えが出せないという問題は確か
にある。例えばこんな問題だ。(これもその広告に掲示されていた問題。実際のものと
若干違うかもしれないが、趣旨は同じだ)
以下の4つの式はすべて同じ答えになる。このとき、A〜Dはそれぞれどうな
るか。小さい順から並べなさい。
・ A × 3/2
・ B ÷ 4/3
・ C ÷ 5/4
・ D × 6/5
4つの式の答えがすべて同じになるようなA〜Dを求めるには、とりあえずその「答
え」を仮定し、等式を作ってみればよい。もっとも簡単だと思われるのは、式の答えを
1とするもので、こうなる。
・ A × 3/2 = 1 ・・・A:2/3 → 8/12
・ B ÷ 4/3 = 1 ・・・B:4/3 → 16/12
・ C ÷ 5/4 = 1 ・・・C:5/4 → 15/12
・ D × 6/5 = 1 ・・・D:5/6 → 10/12
この4つの等式から、答えは小さい順からA,D,C,Bとなる。
これで解決か? いや、実は、もっと簡単なのは式の答えを0としたときで、こうな
る。
・ A × 3/2 = 0 ・・・A:0
・ B ÷ 4/3 = 0 ・・・B:0
・ C ÷ 5/4 = 0 ・・・C:0
・ D × 6/5 = 0 ・・・D:0
これだと、「A〜Dを小さい順にならべなさい」という問題に答えられなくなる。さ
らに、式の答えを−1と仮定すると、答えが1のときとは符号が逆になるので、答えの
順がひっくり返って小さい順からB,C,D,Aとなってしまう。
つまりこの問題は、0すらしらない子供だと答えが出るが、オトナ式に考えると答え
が出ない、というわけだ。
さて、本題に戻って、上記の卵の問題について考えてみる。
この問題に対して、理由を持って正解できる人、分からないが答えてみる人、色々だ
と思う。そして、正解は知っているが、問題の複雑さについて悩んでしまう人もいるだ
ろう。
とりあえず、もう一度問題を読みなおして欲しい。
生卵が浮きも沈みもしない状態で静止しているとき、どのような向きになるか。
浮きも沈みもしない状態で静止? これはどういうことか。
水に物を入れたとして、水より軽いものは浮かび、水より重いものは沈む。浮きも沈
みもしないというのは、水と同じ重さか、あるいは体積あたりの重さ(つまり密度)が
水と同じものでなければならない。
ところが卵は、水よりも相当に重い。水に卵を入れると勢いよく沈んでいく。どんな
向きで入れても水の抵抗などものともせず、水底にゴトンとぶつかって割れるんじゃな
いかと思うくらい勢いよく沈む。それくらい水より重い。
水よりもずっと重い液体ならば、卵も浮かぶはずだ。例えば・・・例えば・・・何だ
ろう。透明で水より重くて小学生が簡単に実験で使えるもの。すぐには思い浮かばない。
どんな液体を使うべきかという問題のほかに、もう一つ難しいことがある。浮きも沈
みもしない状態で静止させるには、その卵の密度と液体の密度をぴたりと一致させなけ
ればならないのだ。密度が少しでも違えば、必ず浮くか沈むかしてしまう。果たして都
合よく静止してくれるのだろうか。
さらに難しいことに、生卵の中身は密度分布が一様ではない。いや、密度分布が異なっ
ているからこそこの問題に答えがわるわけで、それを難点とするの間違いか。少なくと
も卵の重心にかかる重力と浮力とが釣り合えばこれは難点にはならない。
生卵の向きがどうなるか、4つの中から正解を選べ、というのには答えられるが、実
際のところ正解を自分で確認することはできるのだろうか。やってみよう。
簡単に実験するため、やはり水を使う。水だけでは明らかに駄目なので、食塩水の濃
度をいろいろ変えてみることにした。
私の予想とは異なり、上の2つの問題、つまり、都合の良い密度の液体を用意するこ
とと浮きも沈みもしない状態で静止させることは、案外簡単に、しかも同時に解決した。
上で書いたように、卵は水よりかなり重い。ちょっとやそっとの塩を溶かした程度で
は浮かんだりしない。ではどうすればよいのかというと、単純に、もっと塩を入れれば
良い。
卵を横向きにしてもすっぽり入り、かつ10cmくらいの深さのある容器で実験する
なら、ありふれたサイズの食卓塩を半分くらい入れてかき混ぜる(例えば400ccの
水なら60gくらいの塩が必要となる)。塩を入れすぎると卵が水面まで浮かんでしま
うのでその場合は水で薄める。
計量器が無いため塩がどれほど水に溶けているのか確認できなかったが、結果から考
えると、飽和状態かあるいはそれに近づいており、塩が溶けずに混ざっていたと思われ
る。
溶けずに浮遊している塩は自重で少しずつ沈んでいくから、コップの底が最も濃く、
水面に近づくにつれて徐々に薄くなる混合水になっていたようだ。
水深によって密度が徐々に変わると、それに伴って浮力も徐々に変わる。
そのため、コップの中のどこかに、卵の重さと浮力とが釣り合うような場所ができる。
そして卵はそこに落ち着く。長時間的には動いているかもしれないが、見た目上は静止
させることができる。
生卵の緩やかな面の側には密度の低い部分がある。つまり緩やかな面の側の方が軽い。
従って、同じ水深ならばとがった面の方が緩やかな面の方よりも沈もうとする力が強い。
だから、卵を水中で横向きにすれば必ずとがった面を下に向ける。たとえとがった面を
上に向けても、すぐにバランスを崩してひっくり返る。だからこの問題の答えはC。
ところで、問題では「生卵」を使うことになっている。ゆで卵だとこの問題は成り立
たないからだ。おそらく、卵を1時間くらい水に漬けておいただけでも結果が変わるの
ではないかと思う。なぜって、クイズみたいな問題でも、水面下にはきっと問題が潜ん
でいるに違いないから。
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