TOP
記録室
秘書室
応接室
図書室
美術室
外交室
 
グレイマン・クーガー


シュラフィールド戦記 外伝4

『グレイマン』

 背徳の街ランカード。
 西方諸国を追われた無法者と、バッドランドに飽き飽きしたならず者たちの吹き溜まり。
 そびえ立つ『黒の山脈』のただ中に位置し、雨ばかりの短い夏と、濃霧と吹雪に包まれ
た長い冬しか訪れないこの街が、なぜこれほど繁栄を誇っているのか。なぜこれほどまで
に活気に満ちているのか。それはこの街が、レイオン魔法帝国以西で最も発達した、ある
産業を誇っているからである。―――『犯罪』という名の産業を。
 この街では、どんなものでも手に入れることが出来た。それに見合った代価を支払うこ
とができさえすれば。
 またこの街は、どんな人間でも受け入れた。だが、全ての人間がこの街を出ていくこと
が出来る訳ではなかった。
 多くの人間が野望を抱き、或いは逃げ場所を求めて、この街を訪れる。しかし、ある者
はこの街の魅力に取り憑かれ、ある者はこの街を支える無数の土台の一つとなり、またあ
る者は街に一時の潤いを与えて力尽きた。妖しい芳香で虫たちを招き寄せ、ねばつく繊毛
で捕らえ、ついには己の養分としてしまう食虫植物のように、この街は無数の感情と命を
吸い取り、そのたびに大きくなっていった。
 この街は誰にも属さない。誰からも侵されない。この街に法はない。
 しかし、支配者は存在した。広大な盆地に散在する街を、隅々まで分割する七つのシン
ジケートの長たちからなる『七人会議』。遙か昔から七人の長たちは、表面上は穏やかに、
この街が生み出す富を分割し共存してきた。一人が七分の一では満足出来なくなっても、
残りの六人がその不満を押し込めた。時に不満を抱く長は二人になり、三人になるときさ
えあったが、ついに最終的な破局を向かえる事態には至らなかった。彼らの体制は盤石だ
った。ある男が長の一人となるまでは。
 己の野心を献身的な努力にすり替え、ついに長の右腕と呼ばれるまでに至ったダレスは、
この街をつぶさに調査し、この街が『背徳の街』たる所以を、この街が持つ根本的な力の
源を偶然見いだした。ダレスはその発見を誰にも告げず、自分一人のものとした。長い月
日の末、ついに準備の整った彼は、もはやお飾りでしかなくなっていた長に成り代わり、
その椅子に着いた。そして輝く鎧に身を固めた男たちを使い、ほかの長たちの勢力をじり
じりと浸食していった。
 男たちは皆、この物騒な町の基準からしても、恐ろしく腕の立つ連中だった。彼らのま
とう鎧は不思議な光沢を放ち、いかなる武器もへこみ一つつけることが出来ず、さらに恐
るべきことに呪文の効果をも著しく減少させた。鎧の左胸に伝説の青い薔薇を描いた屈強
の男たちを、人は『ナイト・ローズ』と呼んで恐れた。
 今や『六人会議』となってしまった長たちは、この反乱(彼らにしてみれば)を憂慮し
たが、ついに効果的な手段を見いだすことは出来なかった。もはやダレスとナイト・ロー
ズの支配を遮る者はないと思われた時、一団の男たちが彼らの前に立ちはだかった。
 全身を灰色のマントに包んだその男たちを目にした者は、極めて少ない。なぜなら、彼
らの戦いは激烈であったが、そのほとんどは人知れず行われたからである。だが、いつの
頃からか、人々の口に灰色の男たちの噂が上り始め、強者の欲望と暴力に怯える者たちに
一筋の希望をもたらした。人は彼らをこう呼んだ―――『グレイマン』と。
 ※ 続きは、ダウンロードファイルでお楽しみください。
ダウンロード
テキスト版 graymen_t.lzh
(2001/05/05: 70kb)
Word98版 graymen_d.lzh
(2001/05/05: 86kb)

このページの先頭



シュラフィールド戦記